そもそも禁煙したいと思っても、なかなか成功しないのは「ニコチン依存症」があるからです。
タバコを吸うと、その主成分であるニコチンが短時間で脳に達し、脳内報酬回路とも呼ばれる神経系にあるニコチンの受け皿「ニコチン受容体」に結合し、ドパミンという物質を放出させます。
このドパミンが脳にとっての快楽物質であるため、なかなか喫煙習慣をやめられない。
これが「ニコチン依存症」です。このため、意志の力だけに頼った禁煙は非常に困難を伴うといわれています。
ニコチンガムやニコチンパッチには、いずれもニコチンが含まれています。
これらの補助薬は少量のニコチンを体内に補充することで、ニコチン切れによるイライラ感などの離脱症状を緩和しながら、禁煙を助けることを目的としています。
一方、バレニクリンはニコチンを含みませんが、その構造がニコチンに似ているため、ニコチンと同じようにニコチン受容体に結合してドパミンを放出させます。
ただし、ニコチンが結合したときよりもドパミンの放出量は減少します。
もし、バレニクリン使用中にタバコを吸ってもニコチンは結合する受け皿がないため、快楽物質ドパミンもあまり出ないということになります。しかし、バレニクリンによって放出される少量のドパミンによって、禁煙に伴う離脱症状は緩和することができます。
こうして、バレニクリンを12週間内服することによって、タバコを吸ってもそれほど快感を得られないことを次第に体が覚えていき、禁煙に導くというのがバレニクリンの効果のメカニズムです。