<うつ病とは>
簡単に言うと、気分が落ち込んで憂鬱な状態が2週間以上続き、日常生活に支障が出るようになった状態のことを言います。また、心と体の両方に症状が現れることも特徴で、朝方が特につらく時間がたつにつれて少しずつ和らいでいくことが多く見られます。
軽いうつ病の場合は、つらくてもなんとか仕事などをこなしていけるため、そのまま放置して症状を悪化させてしまうということもよくあります。データによると、日本人ではおよそ15人に1人が一生に一度はうつ病にかかったことがあるという結果が発表されています。数年間で確実に患者数は増えており、「仮面うつ病」と呼ばれる体調は優れないが抑うつ感はないと主張する人や、うつの予備軍を含めればさらに増加していると予想されます。
また、現在わが国の自殺者数は年間で3万人を超えており、その半数以上がうつ病を原因としていると言われています。これを考えると決して軽視すべき問題ではないことが明らかです。患者数としては女性の方が多い一方でうつによる自殺率は男性の方が多いことも特記すべき事実です。
<うつ病チェックリスト>うつ病の診断には、SDSと呼ばれる自己診断式のチェック方法がよく用いられます。これを使ってチャックしてみよう。
ここ2週間の状態を振り返り、当てはまるものに○をつけて、その点数の合計を出してみましょう。
◆ 結果
◇ 30点以下 ... うつ病の可能性はほぼありません。
◇ 40点~50点 ... ボーダーライン(軽いうつ傾向があるようです。)
◇ 50点以上 ... うつ病の可能性があります。
<うつ病の原因>うつ病の原因は、いまだはっきりしていません。しかし、有力説としてはストレスなどによって、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質のはたらきが悪くなることが原因なのではないかと考えられています。それらの神経伝達物質がうまくはたらかないことによってやる気や集中力などがうまく伝達されず抑うつ感や無気力状態といったうつ病の症状があらわれるようになります。そのため、現在薬物療法の分野で主流となっているのは脳内伝達物質のセロトニンに作用するSSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる抗うつ剤です。
ですから、うつになる人は弱いとか、甘えているとかいう考えは明らかな誤りです。うつ病になりやすい人は元来責任感が強くまじめな人が多いので、ひとりで抱え込み症状をひどくしてしまうことも多いのです。うつ病は誰もがかかりうるもので、引け目に感じることは全くありません。つらい状態が2週間以上続いているなら、早めに専門家に相談されることをおすすめします。
<うつ病になりやすい人>真面目で責任感が強く、何でも完璧にやろうとする。
気分転換が苦手で、仕事以外の楽しみがない。
自信が持てず、うまく行かないことはすべて自分のせいにする。
嫌と言えない性格で、頼まれると断れない。
頑固で柔軟な考えをすることができない。
<回復のポイント>うつ病になってしまったら、最も大切なことは「休息」です。無理を続けていれば回復どころか症状は悪化し、ますます治りづらくなってしまいます。ここ数年でうつ病に対する理解は確実に深まっており、多くの会社で支援する体制が作られるようになってきています。うつ病になってしまったらまず休む勇気を持つこと、これが大切なポイントです。
また、ひとりで悩まずに周囲の人に相談することも不可欠です。心の病気に周囲の支えは大きな効果をもたらします。特に生活を共にする家族の理解や支えなくして回復するのは非常に困難です。
そして、症状がひどくなってしまったら医療機関に行ったり、専門のカウンセラーに相談してみましょう。うつに対する知識のない人はつい「気分転換に外出でもしたら?」とか「がんばれば大丈夫よ」などとアドバイスや慰めの言葉をかけてしまいますが、これらは逆効果です。
うつ病は正しい対処法をとれば必ず治る病気です。そして、対処が早ければ早いほど短期間で回復することが可能となります。ちょっとおかしいかな、と思ったら放置せずに症状を受け入れ、しっかりと治療しましょう!
<うつ病の人を支える方へ>「がんばれ」と言ったり「気にすることないよ」と慰めたりするのは絶対に言ってはいけません。本人はがんばりたくてもがんばれないのです。
気分転換だと言って、本人の意志に関係なく旅行に行かせたり外出を勧めることも控えましょう。
症状が軽くなってきたからといって、すぐに仕事復帰を勧めるなど、本人を焦らせる言動は差し控えましょう。
うつ病になると、朝起きられなくなったりダラダラと過ごしてしまうことが多くなりますが、それを責めてはいけません。
できることは本人にやらせましょう。うつ病になると依存的になる人がいます。何でもやってあげようとすることは本人の自尊心を傷つけたり自立の機会を奪うことになります。本人が1人でやれることはやらせることを心がけましょう。
専門家への相談を勧めてあげることも必要です。精神科や心療内科へ行くことは敷居が高く、決断が難しい場合があります。その場合周囲の人が声をかけてあげることで本人が行きやすくなりますし、一緒に付き添ってあげることも有効です。また、医療機関での服薬等が不安であれば、心理カウンセラーへの相談を勧めてはいかがでしょうか。気軽に胸の内を話すことができるはずです。